鵞足炎(がそくえん)とバレーボール
- komodaseikotsuin
- 2017年10月18日
- 読了時間: 5分
鵞足炎という障害を聞いた事はありますでしょうか。
スネの骨を下から上に触っていき、1番上まで来た内側の所に痛みが出るものです。
『膝の内側が痛む』と表現される事も多いです。
縫工筋、薄筋、半腱様筋の3つの筋肉の付着部で構成される所を鵞足と言い、そこに炎症が起こっている状態を鵞足炎と言います。

鵞足炎についての細かい情報は、インターネットでもかなり載っていますので、私の方では割愛します。
今回はバレーボールをやっていて見落とされやすい、鵞足炎のリスクが高くなるポイントについてお伝えして行こうと思います。
図1の写真を見て、何か気になる事はありますか。

これは、実際に鵞足炎を発症している患者さんのレシーブフォームを私が真似たモノです。
厳密に言えば、ボールを送り出した直後を真似たモノです。
実際の本人のフォームはもう少し骨盤が後傾して猫背になっていましたが、そこまで真似ようとした瞬間に案の定膝に痛みが走ったので、そこは避けました。
ではこれを基に鵞足炎のリスクファクターを交えつつ説明をして行きます。
上に載せた鵞足を構成する筋肉の写真を見て頂くと分かる通り、全て膝の内側を通ります。
ですので、大腿骨(太ももの骨)に対して脛骨(スネの骨)が外に折り曲げられたり、外に捻られると負担がかかります。
膝が内側に入り爪先が外を向くような状態で負荷をかけると危ないと言えます。
そこで図3を見て下さい。

これは図1の写真に、重心の位置などを書き足したものです。
黄色い丸が体の重心。
赤い矢印は重心が地面に引っ張られる方向。
青い点線は体を支える足の力を分かりやすく上に伸ばしたモノです。
このフォームの患者さんが痛めていたのは左膝です。
左脚を見て下さい。
爪先が外を向き、膝が内側に入っています。
膝の内側が床の方を向いています。
正面からの写真で見ると、重心が左右の脚の真ん中辺りにあります。
横からの写真を見ると、重心が若干後ろ寄りです。
これらの事から、左脚側でもかなり体重を支えているのが分かります。
しかもその体重を膝の内側に乗せて支えています。
これでは鵞足部にかなりの負担がかかっていたはずです。
つまりこの患者さんの鵞足炎を治すにはフォームの修正が必要になるのです。
もちろんこの前段階として、ベースのアライメントの確認は行います。扁平足や回内足、X脚等々のチェックは必須です。
しかし、これらのベースとなる骨格バランスの不具合が無くても、図1の様なフォームになる事があります。(実際この患者さんの立って止まっている状態での骨格バランスは正常範囲内でした。)
では何故そうなったのか。
1番大きく影響していたのは、要求される重心の高さと下半身の筋力のミスマッチだったと考えています。
図2を見て下さい。

これは図1のフォームの左右の足幅と同じ足幅のまま、私が思う注意点を修正したボールを送り出した直後のフォームです。
重心のラインなどを足したモノを並べて見比べて見ましょう。


まず1番の違いは左の爪先の向きです。図3に比べて図4の構えでは、爪先が正面を向き、膝も内側ではなく前側が床に向いています。
これで膝の内側に片寄ってかかる負担を軽減できます。
次に重心の位置を見て下さい。
図4の構えの方が、正面から見ても横から見ても右脚側へ寄っています。
これは右脚に重心がしっかり移動している事を示します。
面を振らずにボールをコントロールするには、重心の移動で面のコントロールをする必要があります。
重心の移動をメインに面を前へ送り出した結果、前にある右脚に重心がしっかりと移動している訳です。
見方を変えると、右脚には相当の筋力が要求されます。
ましてこの打たれる前の構えの時点で重心を極力下げる事を意識して待っていたら、脚は重心移動どころではなく、体を支えているだけで精一杯です。
結果、後ろ脚でも重心を支え続けるフォームをとるのです。
おそらくこの患者さんは、レシーブを習い始めた段階から腰を下げる事を徹底され、それを忠実に守ろうとしてきたのではないでしょうか。その要求に未発達の筋力で答えようとしてきた結果が今のフォームの定着だったと推察します。
地域差もありますが、バレーボールは中学校から始める人が多いと思います。
中学生の体はまだまだ未発達です。
そしておそらくその中でも、部活としてバレーボールを選択する人はこれまで競技スポーツをガッツリやった経験があまりない人が多いのではないでしょうか。
何故なら、それまでにのめり込んだ競技がある人は部活でもその競技を選択する確率が高いからです。
スポーツ経験の多くない人が、バレーボールの様な他の競技と比べ、重心を低くして行うシーンの多い競技を始めれば、初めのうちは下半身の筋力が追い付いていかないのは当然とも言えます。
だからこそ、初めのうちにしっかりと体に無理の少ないフォームを作っていく事がとても大切になります。
しかも体に無理の少ないというのは決して競技力を犠牲にするものでは無いはずです。
何故なら無理が無ければ動きやすくなるからです。
スポーツは動きの質を競うモノとも言えます。無理なく効率良く効果的に動く事は良い結果への近道です。
話が少し逸れたようなので、鵞足炎の予防に戻します。
どのプレーのどの瞬間を切り取っても、爪先の向きに対して同じ方向に膝が動く事を意識して下さい。
そう動けているか確認してあげて下さい。
レシーブの際の後脚のように意識がいきづらいポイントも細かくチェックし続けて下さい。
これは専門的な知識が無くても出来ます。
是非、チームメイト同士で声を掛け合って、ケガを減らしてバレーボールをエンジョイして下さい。
補足
膝や他の部位を守る為には、骨盤のコントロールが非常に重要になります。今回は書けませんでしたが、またの機会に書いていきます。とりあえず、『猫背は厳禁』『おへそを前に』を意識してみて下さい。
ご不明な点等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
障害予防のご相談からフォーム修正まで、責任を持って答えさせて頂きます。
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